卒論を書くために数学文章作法を読んで

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卒論提出が3週間を切った卒論生が急造卒論作成のために,結城浩先生の数学文章作法基礎編から学んだ要点.ほとんど1, 2章の内容だ.
後輩が自分と同じところで迷わないように.
ちなみに木下是雄先生の理科系の作文技術は去年から積ん読である...

for 読者

文章は読者を考えて書く,読者を考えるとは以下の3つ.

  • 読者の知識
    読者は何を知っているのか
  • 読者の意欲
    読者はどれだけ読みたがっているのか
  • 読者の目的
    読者を何を求めて読むのか

それを踏まえてアプローチは...

  • 読者の知識
    順序を考える,今まで提示してきた文章でどこまで読者は情報を受け取っているか,心地よく読み進めるように
    学位論文だから誰でもわかるように書く.(実質読むのは教員と構成を参考にする後輩だけだろうが)
  • 読者の意欲
    心地よく読み進めるためには,適宜,例・図・表を示す
    抽象 -> 具体,具体 -> まとめ,文章の説明 -> 図示といった感じで緩急をつける
  • 読者の目的
    読者は概要を知りたい?個別の事象について知りたい?よりそう.

基本の型

漢字と仮名

接続詞・副詞・指示語は,ひらがなで書いた方が読みやすい

漢字 ひらがな
全て すべて
既に すでに
例えば たとえば

「とき・こと・もの」を形式的に表現するときもひらがな
ex. 公開鍵・秘密鍵を生成する.このときに利用者は,電子証明書に暗証番号の設定を行う
この「とき」は「実際の時間」ではないから,ひらがな.

数字

  • アラビア数字
    任意の自然数(nで置き換えられるもの)が入るときはアラビア数字
    ex. 2つの電子証明書
  • 漢数字
    語句や慣用句の場合,nで置き換えられないもの ex. 一日の長がある

半角・全角

英数字列を扱うときは,半角をつかうのが無難

  • 一つの文には1つの主張.
  • 文章は短くする
    係り受けを長くしない(修飾説が長くなって読みにくい).主語を頭出しする.
  • 逆説でない「が」を使わない*1
  • まどろっこしい表現をしない
bad Good
〜であるが,〜である. 〜である.しかし,
しかしながら, しかし
  • 文意を明確に.文意を不明瞭にする表現は使わない
    • 二重否定〜ないわけではない.
    • 受け身 〜と思われる
    • ぼかし 〜とも言える

段落

一段落にはまとまった主張を
主張ごとに段落を分ける.段落の最初の一文は,その段落をまとめたトピックセンテンスにする.

接続詞・文末を意識する
接続詞と文末を意識することで,段落における文の役割と,分と文の関係が明確になる.
例示・逆説・まとめ等は接続詞を用いて,後に続く文章の性質を示す.

参考文献

結城浩,『数学文章作法基礎編』, ちくま学芸文庫: Math & Science, 筑摩書房, 2013.

*1:木下先生も言ってた気がする